自分の事業|商談から契約まで
この章の狙い
要点: 商談で売り込む必要はない。現状・目標・障壁を順に聞けば、相手が自分でビジネスの欠陥に気づく。提案はその後で、相手が言った言葉をそのまま使って出す。
前章で面談の日程が入った。ここからが本番だと思うと緊張するが、実際にはその逆である。
商談でやることは、話すことではなく聞くことだ。 第3部で見た「決断を助ける」という立場を、 そのまま自分の商談に当てはめる。相手が自分で問題に気づき、自分で必要だと判断する。 そこまで運べば、提案は確認作業になる。
実績がゼロでも成約できる。その理由も、この章で扱う。
面談の前に、ゴールを一つ決めておく
面談に入る前に決めておくことがある。この面談で何が決まれば成功か、である。
決めずに入ると、話が盛り上がったまま終わる。楽しく話せたのに何も決まっていない、 という面談がいちばん多い失敗の形になる。
| 相手の状態 | この面談のゴール | 次に繋ぐもの |
|---|---|---|
| まだ課題が曖昧 | 課題を数字で言語化してもらう | 二回目の面談で提案する約束 |
| 課題は分かっている | 提案して条件を詰める | 契約書の送付 |
| 他社と比較中 | 何を基準に比べているかを聞く | 比較材料を揃えて再提示 |
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一回で決めようとしない。 相手が「もう限界だ」と自分で言うところまで来ていなければ、 その場で契約しても後で温度が下がる。急いで取った契約ほど、続かない。
当日までの段取り
面談は、日程が決まった時点から始まっている。来てもらえない面談は、成約率ゼロである。
| いつ | やること | 理由 |
|---|---|---|
| 日程が決まった直後 | 予約フォームで日時を確定させる | 口頭のやり取りだけだと、どちらかが忘れる |
| 前日 | リマインドを一通送る | 無断キャンセルが大幅に減る。これだけで実施率が変わる |
| 当日の1時間前 | 相手のアカウントをもう一度見る | 前回の監査から変わっている点があれば、それが話の入口になる |
| 開始5分前 | 接続を確認して待つ | 相手を待たせない。最初の印象がここで決まる |
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- 📘 予約フォーム:日程調整を自動化する仕組み。自分の空き時間を出しておき、相手が選ぶだけで確定する。無料で使えるものがある。
前日リマインドを入れるかどうかで、面談の実施率は目に見えて変わる。 契約後にクライアントの導線を作るときも同じ仕組みを入れるので(第10部)、 自分の面談で先に試しておくと、その効果が実感として分かる。
面談前に用意しておくもの
準備が自信を生む。用意するのは四つだけでよい。
⚡ 面談前に手元に置くもの
- 監査の結果 — 相手のどこに穴があるか。数字つきで
- 想定問答 — 出そうな質問と、その答え。声に出して一度は練習する
- 事例 — 語れるものが一つでもあれば出す。無ければ「近い状況の話」でよい
- 価格の根拠 — なぜその割合なのか。年間でいくらになるのか
これを持たずに面談に入ると、相手の質問に反射で答えることになる。 反射で答えた内容は、あとで自分の首を絞めることが多い。
診断型セールス|医師の診察をまねる
- 📘 診断型セールス:先に解決策を出さず、質問で相手の状況を明らかにしてから提案する進め方。
最初から治療法を話す医者は信頼されない。まず症状を聞き、いつからか、 何が悪化させているかを確かめる。その順番を守るから、最後の処方が信頼される。
商談も同じである。順番は三つしかない。
⚡ 診断型セールスの三段
- 現状を聞く — いまの数字を出してもらう。感覚ではなく数字で
- 目標を聞く — どうなりたいか。数字と、その先の感情まで
- 障壁を聞く — なぜ今まで達成できなかったか。ここで相手が自分で欠陥に気づく
三段目が終わった時点で、相手の中に「自分には足りないものがある」という認識ができている。 提案はその認識に対して出す。だから売り込みにならない。
一段目|現状を数字で聞く
聞くのは三つでよい。いまの月商、問い合わせの数、成約率。
「調子はどうですか」では何も分からない。数字を聞くと、二つのことが起きる。
相手が自分の状態を直視する。 感覚では「まあまあ」と思っていたものが、 数字にすると足りていないことがはっきりする。これは指摘ではなく、相手自身の発見になる。
問題の深さが測れる。 月商50万で「もっと伸ばしたい」のと、 月商5万で「生活が厳しい」のとでは、提案する内容も価格も変わる。
「今の月商はどのくらいですか」 「問い合わせは月に何件くらい来ていますか」 「そのうち何件が成約になっていますか」
⚠️ 数字を聞くときの注意
- 答えたがらない相手に食い下がらない。「だいたいで大丈夫です」と幅で聞く形に切り替える。
- 数字を聞いて評価しない。「少ないですね」は絶対に言わない。事実を置くだけにする。
- 自分が事前に調べた数字と食い違っても、その場で訂正しない。相手の認識のほうを先に聞く。
二段目|目標を、感情まで掘る
「三ヶ月後、十二ヶ月後にどうなっていたいですか」と聞く。 数字が返ってきたら、そこで止めずにもう一段掘る。
「そうなったら、どんな気持ちですか」
この一問が効く理由は、人が動くのは数字ではなく感情だからだ。 「月商100万」は目標だが、動機ではない。動機は 「毎月の支払いを気にしなくてよくなる」「家族に胸を張れる」といった形で出てくる。
ここで出た言葉は、後の提案でそのまま使う。自分の言葉で言い換えない。 相手が使った言葉を返されると、人は「分かってもらえた」と感じる。
三段目|障壁を聞く。ここが山場
「なぜ今まで達成できなかったんですか」と聞く。
この質問が診断型セールスの核心である。相手は答えようとして、自分のビジネスを振り返る。 そして多くの場合、答えている途中で自分で気づく。
「発信は続けてるんですけど、そこから先が……あ、そうか、売る場所がないのか」
こうなれば、提案は要らない。相手が自分で問題を言語化した状態で、 こちらは「そこ、まさに自分がやっている領域です」と繋ぐだけになる。
| 相手の答え | 実際の問題 | 繋ぎ方 |
|---|---|---|
| 時間がなくて手が回らない | 仕組みがなく、全部が手作業 | 「回す人がいれば解決する話ですね」 |
| 何をすればいいか分からない | 設計がない | 「順番が決まっていないだけかもしれません」 |
| やってみたけど効果がなかった | 単発の施策で、導線が繋がっていない | 「どこまでやられましたか」と、さらに聞く |
| 人を雇ったがうまくいかなかった | 指示の仕方の問題。SOPがない | 「何を任せて、どこで止まりましたか」 |
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答えを急がない。 相手が黙ったら待つ。考えている時間を埋めようとして こちらが話し始めると、せっかくの気づきが流れる。
三段を通した会話の例
型だけ見ても、実際にどう流れるかは分かりにくい。一本通した例を置く。 言葉づかいは自分に合わせて変えてよい。質問の順番だけを写す。
「今日はお時間ありがとうございます。まず現状を教えていただきたいんですが、いま月の売上はどのくらいですか」
——「そうですね、月によるんですけど、だいたい20万から30万くらいです」
「問い合わせは月に何件くらい来ていますか」
——「DMだと5件くらいですかね。多い月で10件」
「そのうち、実際にお客さんになるのは何件くらいですか」
——「2件か3件です」
「ありがとうございます。次に、目標のほうを伺いたいんですが、三ヶ月後にどうなっていたら『うまくいった』と言えますか」
——「月100万は行きたいですね」
「100万になったら、いまと何がいちばん変わりますか」
——「……今は正直、毎月ギリギリで、来月の分を考えながら発信してるんです。それが無くなったら、もっと落ち着いてコンテンツ作れると思います」
「なるほど。その状態、いつ頃からですか」
——「もう一年半くらいですね」
「一年半、100万を目指してこられて、いま20〜30万ということですよね。何がいちばん、そこに届かない原因になっていると思われますか」
——「うーん……発信は毎日やってるんですよ。リーチも伸びてる。でも、そこから先が……あ、そうか。売る流れが無いのか。DMが来ても、その場で単発で答えて終わってるかもしれないです」
ここで三段が終わっている。相手が自分で「売る流れが無い」と言った。 こちらはまだ、一度もサービスの話をしていない。
「まさにそこです。いま自分がやっているのが、その『売る流れ』を作る仕事です。〇〇さんの場合、リーチが出ていて問い合わせも来ているので、足りないのは集める力ではなく、来た人を運ぶ道のほうだと思います」
⚡ この会話で使った技
- 数字を三つ聞いた(月商・問い合わせ数・成約数)。評価は一切していない
- 「どんな気持ちですか」ではなく「何がいちばん変わりますか」と聞いた。同じことを聞いている
- 「いつ頃からですか」で期間を出させた。一年半という数字が、相手自身に効いている
- 障壁の質問で、相手が言い終わるまで黙っていた
- 提案は、相手が使った「売る流れ」という言葉をそのまま返している
⚠️ この会話が壊れる分岐
- 月商を聞いた直後に「それは少ないですね」と言う。ここで相手は防御に入る。
- 「100万行きたい」に対して、すぐ「できます」と返す。まだ障壁を聞いていないので、根拠がない。
- 「あ、そうか」の後を待たずに提案を被せる。気づきが自分のものにならず、押し売りに戻る。
三フェーズを、この商談に当てはめる
第3部で見た三フェーズ(理解50%・提示30%・決定20%)を、診断型セールスに重ねるとこうなる。
| フェーズ | 時間の配分 | 診断型セールスでは | 60分の面談なら |
|---|---|---|---|
| 理解 | 50%以上 | 現状・目標・障壁の三段 | 30〜35分 |
| 提示 | 30% | 相手の言葉を使って解決策を出す | 15〜20分 |
| 決定 | 20% | 問いかけて、待つ | 10分 |
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理解に半分以上を使う。 これができていない商談は、 相手が「話を聞いてもらえなかった」という印象だけを持って終わる。
時計を見ながらやる必要はないが、面談が終わったあとに 「自分が話していた時間はどのくらいか」を振り返る習慣は持っておく。 半分を超えていたら、次はもっと聞く。
提示は、結果と証拠で話す
提示の型は一つでよい。
⚡ 提示の一文型 「いま X の状態にいて、Y を目指していて、Z が障害になっているなら、このやり方が合っています」
X・Y・Z には、相手が言った言葉をそのまま入れる。 言い換えると、相手は自分の話だと感じなくなる。
| やってはいけない | やること | |
|---|---|---|
| 話す対象 | 機能(動画の本数、作業の内容) | 結果(どうなるか) |
| 根拠 | 自分の説明 | 事例と数字 |
| 言葉 | 自分の用語 | 相手が使った言葉 |
| 長さ | 一通り全部説明する | 相手の課題に関係する部分だけ |
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機能の話をしたくなるのは、自分が不安なときである。 提供できるものを全部並べれば価値が伝わる気がするが、実際には逆で、 相手は「結局、自分の問題はどうなるのか」が見えなくなる。
実績がなくても成約できる理由
成約の最大の鍵は実績ではない。「この人ならできそうだ」という相手の確信である。
- 📘 Confidence:確信。ここでは、相手に「この人に任せて大丈夫だ」と感じさせる状態を指す。
実績は確信を作る材料のひとつにすぎない。材料は他にもある。
⚡ 確信を作る三つの振る舞い
- 堂々と話す — ゆっくり、低めの声で。迷いのある提案は、内容が良くても信頼されない
- 問題を数字で指摘する — 具体性がそのまま専門性の証明になる。感想は誰でも言える
- 解決策を言い切る — 「これをやればこうなります」。「〜だと思います」は確信を消す
自信は、実績ではなく準備から来る
「自信を持て」と言われても持てない。当然で、自信は性格ではなく状態だからだ。
順番はこうなっている。準備が自信を生み、自信が信頼を生む。 だから自信がないときにやることは、心構えを変えることではなく準備を足すことになる。
| 不安の中身 | 実際に足りていないもの | やること |
|---|---|---|
| 何を聞かれるか分からない | 相手のビジネスの情報 | ファネル監査をやり直す。投稿・商品・導線を全部見る |
| 質問に答えられるか不安 | 想定問答 | 出そうな質問を10個書き出し、答えを声に出して練習する |
| 実績を聞かれたら困る | 語れる材料 | 無償でも一件やり切る。事例が一つあれば話は変わる |
| 価格を言うのが怖い | 価格の根拠 | 年間でいくらの価値になるかを計算しておく(第8部) |
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四つとも、心の持ちようではなく作業で埋まる。 自信がないと感じたら、それは準備が足りていないという信号だと読み替える。
⚠️ 確信と押しの強さを取り違えない
- 言い切ることと、押し切ることは別。相手の反応を見ずに断言し続けるのは、確信ではなく独演になる。
- 「絶対に結果が出ます」は言わない。約束できないことを言うと、後で自分の首を絞める。
- 声を大きくしても自信には見えない。ゆっくり話すほうが、はるかに落ち着いて見える。
実績がないときに、何を語るか
「実績はありますか」と聞かれる。これが最も怖い質問だが、答え方は決まっている。
嘘をつかない。そして、無いことを謝らない。
無いものを誤魔化すと、その一点だけで信頼が消える。逆に、 無いことを正面から認めたうえで別の材料を出せる人は、そこで一段信頼される。
| 使える材料 | 言い方の例 |
|---|---|
| 監査の精度 | 「実績はこれからです。ただ、〇〇さんのアカウントについては三点、具体的に見つけています」 |
| 学んだ元 | 「海外で先に確立している手法を学んでいます。日本ではまだ扱う人が少ない領域です」 |
| リスクの負い方 | 「だから初期費用はいただきません。成果が出た分だけです」 |
| 近い事例 | 「自分の実績ではありませんが、同じ手法で数字が動いた例を三つ持っています」 |
四つ目の「近い事例」は、自分の実績のように語らない。 「自分がやりました」と「同じ手法の事例です」は、まったく違う。 後者は正直な情報提供だが、前者は嘘になる。
そして三つ目が最も強い。リスクを自分が全部引き受けているという事実は、 実績よりも確信を作ることがある。「出せると思っていなければ、この条件は出せない」という 論理が、相手にも伝わるからだ。
想定問答を十個用意する
面談で出る質問は、だいたい決まっている。書き出して、答えを準備しておく。
| よく出る質問 | 答えの方向 |
|---|---|
| 実績はありますか | 上記のとおり。無いことを認め、別の材料を出す |
| 具体的に何をしてくれるんですか | 範囲を四段で示す(担当範囲の表)。全部やると言わない |
| どのくらいで結果が出ますか | 段階で答える。「導線は一ヶ月、数字が動くのは二〜三ヶ月」 |
| 何%ですか | 範囲とその根拠。担当範囲とセットで出す |
| 他の人にも同じことをしているんですか | 同時に見られる数の上限を正直に言う |
| 途中でやめられますか | 契約期間と解約条件を、その場で言えるようにしておく |
| 自分でもできますか | 「できます。時間があれば」と認める。争点は時間であって能力ではない |
| 前に外注して失敗しました | 前回の内容を聞く。違いを説明する |
| うちのジャンルでも通用しますか | 通用する理由か、通用しにくい理由を正直に言う |
| 今すぐ決めないとダメですか | 期限を切らない。「持ち帰ってください」と言えるほうが信頼される |
十個を声に出して答えてみる。 頭の中で答えられても、口に出すと詰まる質問が必ずある。 そこが準備の足りていない場所になる。
面談は数字で終わらせる
面談の最後には、必ず数字を置く。
「売上の20%です。今月が50万なら、報酬は10万になります」
抽象的な話で終わらせないことが、成約を分ける。 「一緒に頑張りましょう」では、相手は何も判断できない。 判断できる材料を、その場で置く。
数字を出すと、相手の頭の中で計算が始まる。 「じゃあ100万になったら20万か。それでも80万は残るのか」 この計算が起きた時点で、相手は導入後の状態を想像している。
割合は「減る額」ではなく「増える額」で見せる
同じ20%でも、見せ方で受け取り方が変わる。
| 見せ方 | 相手に見えるもの |
|---|---|
| 「売上の20%をいただきます」 | 自分の取り分が20%減る |
| 「いま30万のところを、100万にします。増えた70万のうち20万です」 | 手元が30万から80万に増える |
後者のほうが正確でもある。何もしなければ増えない分から支払うのがレベニューシェアの前提だからだ。
伝えるときは三つの数字を並べる。いまの月商・目標の月商・そのときの報酬額。 三つ並ぶと、相手は自分で差し引きができる。
⚠️ 数字の出し方で失敗する形
- 目標だけを見せる。「100万になります」だけだと、根拠のない約束に聞こえる
- 割合だけを見せる。%は抽象的で、金額にしないと判断材料にならない
- 良い数字だけを出す。うまくいかなかった場合の話を先に自分から出すほうが、結果的に信頼される
高額なものは、その場で売らない
30万円前後の判断には、信頼と対話が要る。投稿やDMだけでは決まらない。
だからローンチや発信のゴールは「購入」ではなく「面談予約」に置く。 これは自分の営業でも、後でクライアントの導線を設計するとき(第10部)でも同じ原則になる。
金額が大きいほど、間に人が入る工程が必要になる。 逆に言えば、面談を挟まずに売れる価格帯には上限がある。
リスクゼロのオファー
- 📘 レベニューシェア:固定の報酬ではなく、上がった売上の一定割合を受け取る契約の形。成果報酬。
提案の形は一つでよい。
「初期費用はいりません。上げた売上の20〜40%だけをいただきます」
なぜ断る理由が消えるのか
相手の側から見ると、こうなっている。
| 相手が普通に感じる不安 | この提案だとどうなるか |
|---|---|
| 払ったのに成果が出なかったら | 成果が出た分しか払わない |
| いくらかかるか分からない | 売上に連動するので、払える額しか発生しない |
| 合わなかったら損する | 初期費用がゼロなので、試すコストが無い |
| 効果が見えない | 報酬額そのものが成果の数字になる |
断る理由が全部消える。 だから成約率が上がる。
この提案ができる条件
一方で、これは誰でも出せる提案ではない。
自分の側にリスクが全部乗る。 成果が出なければ報酬はゼロで、 かけた時間は戻ってこない。だからこの提案は、 「成果を出せる」と自分が判断できる相手にだけ出す。
前章のターゲット選定とファネル監査が、ここで効いてくる。 穴が特定できていて、直せば数字が動くと分かっている相手なら、この提案は怖くない。 逆に、監査をせずにこの提案を出すのは、結果の分からない賭けになる。
⚠️ レベニューシェアで揉める形
- 「売上」の定義を決めていない。総売上か、返金を引いた後か、経費を引いた後か。
- 自分が関与していない売上も対象にしてしまう。既存の顧客からの継続分などは、対象外にするのが普通。
- 相手に売上の開示義務を課していない。数字が見えなければ、割合は意味を持たない。
- 期間を決めていない。契約終了後も報酬が続くのか、そこで終わるのかを書いておく。
契約前に決める四つ
条件は口頭で終わらせない。次の四つは、必ず文面にする。
⚡ 契約書に入れる四点
- 担当範囲 — どこからどこまでをやるのか。集客と販売までか、提供と運用も見るのか
- 報酬の割合と対象 — 何%を、どの売上に対して。開示義務もここに書く
- 期間 — 契約の長さ、更新の条件、終了後の扱い
- 報告の頻度と形式 — 週次か月次か、何を報告するか
担当範囲と割合は、必ずセットで決める
ここは原本の二つで書き方が違うので、整理しておく。
GOA本編は、ビジネスの四つの柱(集客・販売・提供・運用)のうち、 提供と運用はクライアント側の仕事だとしている。オペレーターが作るのは集客と販売の導線までである。 一方、旧版ガイドは成約後のフルフィルメント(提供の質の設計)まで オペレーターの領域として書いている。
これは最も大きい前提の差で、工数も報酬率も変わる。
| 報酬 | 担当範囲 | 具体的に何をするか |
|---|---|---|
| 20% | 基本業務 | 導線設計、投稿設計、コンテンツ配分。契約書の既定値 |
| 30% | セールス・商品設計に関与 | 上記+オファー設計、商談の仕組み、リードマグネット |
| 40% | 広告運用・包括支援 | 上記+広告、オンボーディング、サポート設計 |
| 50%(上限) | 事業全体の統括 | 上記+チーム管理、採用、数値責任 |
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この四段は、実際の契約書(第11条)にそのまま書かれている形である。 GOA本編は20〜40%の範囲を示しているが、契約書は50%を上限として明示的に置き、 その条件を「事業全体オペレーション統括」と定義している。 つまり、 範囲を条項で縛ることで、範囲外の数字にならないようにしてある。
だから提案するときは、割合だけを言わない。 必ず「この範囲で、この割合」の形で出す。 契約書の第11条をそのまま見せてもよい。四段が並んでいるので、 相手も「今回はどこか」を選ぶ形で理解できる。
⚠️ 揉める原因は割合ではなく定義
- 「40%は高い」で揉めることは少ない。「そこまでやると聞いていない」で揉める。
- 範囲を決めずに割合だけ決めると、後から仕事が増えても報酬は変わらない状態になる。
- 逆に、範囲を決めておけば「それは範囲外なので、別途お見積もりします」と言える。
四点を、実際にどう書くか
条項の文面は難しく書く必要はない。読んで意味が一つに定まればよい。
担当範囲は、やることを箇条書きにして、最後に一文を足す。 「本契約における業務範囲は上記に限り、これ以外の業務が必要となった場合は、別途協議のうえ条件を定める」——この一文があるかどうかで、後の会話が変わる。
報酬の対象は、何を売上と呼ぶかを定義する。 「本契約における売上とは、本件業務によって獲得した顧客からの入金額のうち、返金・手数料を控除した額をいう」。既存顧客からの継続分を含めるかどうかも、ここで書く。
開示義務を、報酬の条項とセットで置く。 「甲は、毎月〇日までに前月の売上明細を乙に開示する」。 これが無いと、割合を決めても計算する材料が手に入らない。
期間と終了後の扱いを書く。 「契約期間は〇ヶ月とし、双方の申し出がなければ自動更新する」 「契約終了後、終了時点で既に獲得済みの顧客からの入金については、終了後〇ヶ月間を限度として報酬の対象とする」。 終了後の扱いを決めていないと、辞めた後に揉める。
報告の頻度も条項に入れておく。 「乙は毎週〇曜日までに、実施内容・数値・翌週の施策を書面で報告する」。 自分を縛る条項に見えるが、実際には自分を守る条項になる。 報告を続けていれば「何もしていない」と言われることがない。
⚠️ 契約書で抜けやすいところ
- 開示義務。割合だけ決めて、売上を見せてもらう約束をしていない。
- 終了後の扱い。仕込んだ導線から売れ続けるのに、報酬が止まる/逆に永久に続く。
- 秘密保持。相手の売上や顧客情報を扱うので、片方向でも入れておく。
- 成果が出なかった場合の扱い。何ヶ月動かなければ見直すのか、条件を書いておく。
相手にも義務を書く
見落とされやすいが、契約書には相手側の義務も書く。 レベニューシェアは成果が出なければ報酬がゼロなので、 相手が動かないと自分だけが損をする構造になっている。
実際の契約書では、第13条と第14条がこれにあたる。
| 条項 | 中身 |
|---|---|
| コミットメント義務 | 指定した施策の実行/コンテンツ対応と改善協力/DM・導線の対応/24〜48時間以内の返信 |
| コミット不足の判定 | 指示した施策の未実行/7日以上連絡がない/継続的な非協力 |
| 是正と解除 | 是正を求めてから7日以内に改善がなければ即時解除できる。解除前の売上の報酬は請求できる |
| 責任の限定 | 相手のコミット不足で成果が出ない場合、こちらは責任を負わない |
返信の期限を条項に書いておくのが効く。第7部で見たとおり、 進行が止まる最も多い原因は「こちらが待っていることを相手が知らない」ことなので、 最初から期限が決まっていれば催促が催促にならない。
そして最後の「責任の限定」は、自分を守る条項である。 成果報酬でリスクを全部引き受けている以上、相手が動かなかった場合の線は引いておく。
反論が出たら
断りが出ても、それは終わりではない。詳しい型は第3部にまとめてあるので、 ここでは自分の商談で特に出やすい三つだけを見ておく。
| 出やすい反論 | 何を確認するか | 返し方の骨格 |
|---|---|---|
| 「検討します」 | 何について検討するのか | 「内容・タイミング・金額のどれについてですか」と絞る |
| 「割合が高い」 | 何と比べて高いのか | 「解決しないまま一年過ごした場合の損失」と対比させる |
| 「前に頼んで失敗した」 | 前回の失敗の原因 | 「そのとき何が原因でうまくいかなかったですか」と聞き、違いを説明する |
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三つ目が最も多い。SNS運用を外注して失敗した経験がある相手は多く、 その記憶がそのまま抵抗になっている。前回との違いを説明できれば、逆に信頼が上がる。 「前は投稿の代行だけだったんですね。今回は売る導線まで作る話です」といった形になる。
決まったら、その場で三つ決める
「やりましょう」が出た瞬間に、勢いのまま終わらせない。 温度が最も高いのはこの時点なので、次の三つをその場で押さえる。
⚡ 成約直後にその場で決める三つ
- 開始日 — いつから始めるか。日付を入れる
- 最初の打ち合わせ — 契約後の初回。この場でカレンダーに入れる
- 必要なものの受け渡し — アカウントの権限、過去の数字、既存の資料
三つ目を後回しにすると、契約したのに何も始められない期間が生まれる。 その期間が長いほど、相手の熱量は下がる。契約直後の空白が、最初の離脱要因になる。
契約書は当日か翌日に送る。「後日お送りします」と言ったまま数日空くと、 その間に相手の気持ちが冷めることがある。詳しい初動の話は次章で扱う。
決まらなかったときにやること
その場で決まらなくても、次に繋ぐものを一つ置いてから終わる。
- 考える材料を渡す — 監査の結果を書面にして送る。これだけでも価値が残る
- 期限を決める — 「来週の水曜までにお返事いただけますか」と、日付を置く
- 次の接点を作る — 断られた場合でも、発信を続けていれば数ヶ月後に戻ってくることがある
そして、断られたことを失敗として扱わない。第3部の前提に戻る。 合わない相手だっただけである。 自分が助けられる相手だけを相手にすると決めた以上、 全員が契約するほうがおかしい。
⚠️ 面談後にやりがちな失敗
- 返事を待ち続ける。期限を決めていないと、待っているのか終わったのか分からない状態になる。
- 条件を下げて追いかける。値引きで取った契約は、その後も値引き前提の関係になる。
- 断られた理由を聞かない。次に活かせる情報が、そこにしかない。
この章のチェックリスト
⚡ 第6部の通過チェック
- 面談前にゴールを一つ決める理由を説明できる
- 診断型セールスの三段を、順番どおりに言える
- 三段目で相手が自分で気づく、という構造を説明できる
- 三フェーズの時間配分を、自分の面談時間に当てはめて言える
- 提示の一文型に、自分のサービスを当てはめて書ける
- 自信が準備から来る、という順番を説明できる
- レベニューシェアが断られにくい理由を、相手の側から四つ言える
- この提案を出せる条件が何かを言える
- 契約書に入れる四点を言える
- 担当範囲と報酬割合の対応表を書ける
次章へ
契約が決まった。ここまでが自分の事業の「取る」側の話になる。
次章では、契約したあとに何をするかを扱う。 最初の24時間で何をするか、毎週何を見て、毎月何を決めるか。 成果を出し続ける側の設計に入る。