自分の事業|契約後を回す
この章の狙い
要点: 契約後の仕事は「作業をこなすこと」ではなく「数字を見て、詰まっている一箇所を直し続けること」である。何を測るかを最初に決めた人だけが、それをできる。
契約が決まった瞬間、多くの人は安心する。そこが分かれ目になる。
契約はゴールではなく、スタートラインですらない。 相手が金を払うと決めた時点で、 期待値は最も高い場所にある。ここから成果が出るまでの間、その期待値は放っておくと下がり続ける。
この章では、契約後にやることを順番に見ていく。最初の24時間、毎週やること、毎月やること、 そして自分がいなくても回る状態の作り方まで扱う。
熱量は必ず下がる
人の熱量は、買った直後が最高点である。そこから時間とともに下がる。これは相手の性格ではなく、 買い物というものが持つ性質である。
だから設計はこうなる。下がる前に、成果の実感を一つ渡す。
| 契約からの経過 | 相手の状態 | 何が起きるか |
|---|---|---|
| 直後 | 期待が最高点 | 何を言っても前向きに受け取られる |
| 3日後 | 冷め始める | 「本当に大丈夫だったか」が頭をよぎる |
| 1週間後 | 何も起きていなければ不安 | 連絡が来ないこと自体が不満になる |
| 1ヶ月後 | 成果か、少なくとも進捗が要る | 何も見えなければ解約の話が出る |
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⚠️ 契約直後にやりがちな失敗
- 「まず全体を設計してから動きます」と言って一週間黙る。相手からは止まって見える。
- 完璧な計画書を作ろうとする。完成度より速度が効く時期に、速度を捨てている。
- 相手からの連絡を待つ。契約直後は、こちらから動く時期である。
最初の24時間で決まる
初動でやることは三つだけでよい。完成度より速度を取る。
⚡ 最初の24時間でやる三つ
- 感謝と、これからの流れを伝える — 何を、いつまでに、どの順でやるかを一枚で示す
- 必要なものを受け取る — アカウントの権限、過去の数字、既存の資料
- 最初の打ち合わせを確定させる — 日付をカレンダーに入れる
なぜ完成度より速度なのか
三つとも、質を上げようと思えばいくらでも上げられる。だがこの時期に効くのは質ではなく反応速度である。
理由は、相手が判断しているのが成果ではなく「この人は動く人か」だからだ。 成果が出るのは数ヶ月先で、いま判断材料になるのは動きの速さしかない。
24時間以内に三つが揃っていれば、相手は「進んでいる」と感じる。 完璧な計画書が一週間後に届くよりも、粗くても翌日に流れが見えるほうが、この時期は強い。
渡す「流れの一枚」に書くこと
一つ目の「これからの流れ」は、A4一枚に収まる量でよい。書くのは五つ。
| 書く項目 | 中身 | なぜ書くか |
|---|---|---|
| 全体の期間 | 契約期間と、その中の区切り | 相手が全体像を持てる |
| 最初の30日にやること | 具体的な作業と、その順番 | 直近が見えると安心する |
| いつ何が見えるか | 数字が動き始める時期の目安 | 期待値のズレを先に潰す |
| 相手にお願いすること | 権限、素材、確認の依頼 | 待ちの発生を防ぐ |
| 連絡の頻度と方法 | 週次報告の曜日、緊急時の連絡先 | 沈黙への不安を先に消す |
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三つ目が最も重要である。「三ヶ月で数字が動き始めます。最初の一ヶ月は仕込みなので、表面上は何も変わりません」と先に言っておく。これを言わずに始めると、 一ヶ月目の終わりに「何も変わっていない」という話になる。
最初の30日の型
契約後の一ヶ月は、だいたいこの形になる。
| 週 | やること | 相手に見えるもの |
|---|---|---|
| 1週目 | 現状の数字を取る。ICPのヒアリングをする | 「ちゃんと調べてくれている」 |
| 2週目 | ICP設計書とワードバンクを渡す。オファーを詰める | 成果物が一つ手元に届く |
| 3週目 | コンテンツ配分を設計し、投稿の型を決める | 投稿の中身が変わり始める |
| 4週目 | 導線を作る。Bioと無料の入口を整える | 問い合わせの入口ができる |
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二週目に成果物を一つ渡すのが効く。数字はまだ動いていないが、 形のあるものが手元に届くと、進んでいることが伝わる。 ICP設計書とワードバンクは、この目的にちょうど合う(第8部で作り方を扱う)。
契約後の業務フロー
契約したら、この七つを順に回す。全体像を先に頭に入れておくと、いま何をしているかで迷わなくなる。
⚡ 契約後の七ステップ 0. KPIの設定 — 何を測るかを最初に決める
- ICPの設計 — 誰に売るのかを言語化する(第8部)
- オファーの作成 — 何をいくらで売るかを決める(第8部)
- コンテンツ配分の設計 — 何をどの比率で投稿するか(第9部)
- エバーローンチの構築 — 常時売れる導線を作る(第10部)
- プロダクトローンチの実施 — 期間限定で面談を集める(第10部)
- 数値確認とPDCA — 詰まっている場所を直し続ける
0と6が、この章の中身である。1から5は、クリエイターの事業を設計する仕事なので、 第8部から第10部で扱う。
順番を飛ばさない。ICPが決まっていないのにコンテンツ配分を設計しても、 誰に向けた投稿なのかが決まらない。上流が決まっていないと、下流は全部やり直しになる。
Step 0|KPIを最初に決める
- 📘 KPI:Key Performance Indicator。目標に届いているかを測るための数値。
最初にこれを決める。決めずに走ると、うまくいっていないときに何を直せばいいか分からなくなる。
メインは一つ、サブは四つ
メインのKPIは月の成約数にする。クライアントと共有するゴールはこれ一つでよい。
サブのKPIは、自分が導線を診断するために追う数字である。これはクライアントに報告しない。 報告するのは成約数だけにする。数字を並べすぎると、相手は何が良くて何が悪いのか判断できなくなる。
| 段階 | 基準値 | 何を意味するか |
|---|---|---|
| プロフィール → DM | 1〜2% | プロフィールとCTAが機能しているか |
| DM → 面談予約 | 20〜30% | 個別のやり取りで温度を上げられているか |
| 面談予約 → 面談実施 | 90〜100% | リマインドが機能しているか |
| 面談実施 → 成約 | 40〜50% | 商談の進め方が機能しているか |
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基準値を下回っている段階が、改善すべき場所になる。 全部が基準内なのに成約数が足りないなら、それは母数の問題なので、集客側を増やす話になる。
⚠️ この基準値を使う前に決めること
- 原本には「プロフィール文 → DM 1〜2%」とあるが、何に対する割合かが書かれていない。フォロワー数なのか、プロフィールに到達した人数なのかで、結果は大きく変わる。
- 契約したら、まずこの定義をクライアントと揃える。プロフィールへの到達数はインサイトで見られるので、そちらを分母にするほうが実態に近い。
- 定義を揃えないまま報告すると、良くなっているのか悪くなっているのかも分からなくなる。
最初は目標値を決めなくてよい
契約直後は、そもそも現状の数字が分からないことが多い。 その場合はまず一ヶ月測ってから目標を置く。
いきなり「月10件成約」と決めても、現状が2件なら現実味がなく、 現状が20件なら低すぎる。測ってから決める順番のほうが、後の会話が噛み合う。
Step 6|数値確認とPDCA
- 📘 PDCA:計画(Plan)→ 実行(Do)→ 確認(Check)→ 改善(Act)を繰り返す進め方。
- 📘 ボトルネック:全体の流れを制限している、いちばん狭い場所。瓶の首が細いと、中身がいくらあっても出る量は首の太さで決まる。
回し方は三段階である。感覚で動かないことが全部の前提になる。
⚡ PDCAの三段階
- ボトルネックを特定する — どの段階の数値が基準を下回っているか
- 施策を一つだけ変える — 複数同時に変えると、何が効いたか分からなくなる
- 二週間観察する — 一週間ではたまたまの結果に振り回される
なぜ一つだけ変えるのか
三つ同時に変えて数字が上がったとする。次の月に同じことをしようとしたとき、 どれが効いたのか分からない。 三つ全部を続けるしかなくなり、無駄が残り続ける。
逆に数字が下がったときはもっと困る。三つのうちどれが足を引っ張ったのかが分からないので、 全部を戻すことになり、一ヶ月が丸ごと消える。
一つずつ変えるのは遅いようで、いちばん速い。
なぜ二週間なのか
一週間の数字は揺れる。投稿が一本たまたま伸びた、連休が入った、 相手の業界で何かがあった——そうした偶然が、一週間だと結果を左右する。
二週間あれば、その揺れがある程度ならされる。 逆に一ヶ月待つと、間違った施策を長く続けることになる。二週間が、その間の落としどころである。
ボトルネックの診断表
数値が基準を下回ったとき、段階ごとに原因と打ち手が違う。
| 詰まっている段階 | 基準値 | 考えられる原因 | 打ち手 |
|---|---|---|---|
| プロフィール → DM | 1〜2% | コンテンツ配分が偏っている。プロフィールのCTAが機能していない | 配分を見直す。CTAの文言を一つだけ変える |
| DM → 面談予約 | 20〜30% | 無料で渡しているものが刺さっていない。フォローアップをしていない | 渡す中身を変える。未反応者への返信を仕組み化する |
| 面談予約 → 実施 | 90〜100% | リマインド不足 | 前日と当日にリマインドを入れる |
| 面談実施 → 成約 | 40〜50% | 商談の進め方の問題。聞く時間が足りていない | 三フェーズの配分を確認する。値段提示後に沈黙を作る |
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一番上から順に見る。 下の段階を直しても、上が詰まっていれば流れてくる人数が増えない。
⚠️ PDCAが回らなくなる形
- 数字を取っていない。感覚で「今月は良かった」と言っている状態では、何も改善できない。
- うまくいかないと焦って複数を同時に変える。最も多い失敗で、原因が永久に分からなくなる。
- 一週間で結論を出す。たまたまの結果に振り回されて、良い施策を捨てることがある。
- 施策を変えたことを記録していない。三ヶ月後に「あのとき何を変えたか」が思い出せなくなる。
週次でやること
目的は「今週ちゃんと進んでいるか」を確認し、止まらないようにすることである。
| やること | 中身 | 注意 |
|---|---|---|
| 数値の確認と記録 | フォロワー、リーチ、問い合わせなど、事業に関係する数字を毎週見る | 施策を変えた場合は最低二週間見てから判断する |
| 施策の進捗確認 | 反応が良かったもの・悪かったものを比べ、来週の打ち手を決める | クライアント側に動いてもらう必要があることは、進んでいるか確認・催促する |
| 週次報告 | 「今週やったこと → 数字の結果 → 来週の打ち手」の三点セット | 特に報告することがない週でも必ず送る。沈黙はNG |
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沈黙が最も危険な理由
成果が出るまでには時間がかかる。その間、相手には何も見えない。
見えない期間に連絡がないと、人は最悪を想像する。 「何もしていないのではないか」「忘れられているのではないか」。 実際には作業が進んでいても、伝わっていなければ同じことになる。
だから報告することがない週こそ報告する。 「今週は〇〇を進めていて、数字にはまだ出ていません。来週〇〇まで進めます」 ——これだけで、相手の不安は消える。
成果が出る前のコミュニケーションの密度が、信頼の土台になる。
週次報告の書き方
三点セットを、そのまま三つの見出しにする。長く書かない。五分で読める量に収める。
今週やったこと。プロフィールのCTAを『DMで受け取る』に変更しました。リール三本の台本を、保存されやすい構成に変えています。無料で配る資料の一本目が完成しました。
数字の結果。リーチは先週比で1.2倍、保存率が2.1%から3.4%に上がっています。 DMは今週4件で、先週の2件から増えました。まだ数が少ないので、来週も見ます。
来週の打ち手。無料資料への導線をストーリーに置きます。 リールは同じ構成であと三本出して、保存率が続くかを確認します。 〇〇さんには、来週の撮影用に〇〇の素材をお願いできればと思います。
⚡ 週次報告に必ず入れる四つ
- やったこと — 作業の一覧ではなく、意図が分かる形で
- 数字 — 先週との比較で。単独の数字は良し悪しが判断できない
- 来週の打ち手 — 何を変えるのか。変えないなら「継続」と書く
- 相手にお願いすること — あれば必ず書く。無ければ「今週は特にありません」
四つ目を毎回書くと、相手側の作業が止まりにくくなる。 こちらが待っていることを相手が知らないのが、進行が止まる最も多い原因である。
⚠️ 週次報告でやりがちな失敗
- 作業を羅列する。何のためにやったかが無いと、忙しさのアピールに見える
- 良い数字だけ出す。悪い数字を隠すと、後で説明できなくなる
- 数字が動かなかった週に報告を飛ばす。飛ばした週の分だけ、不安が溜まる
- 長く書く。読まれなければ、書いていないのと同じになる
月次でやること
目的は「この方向で合っているか」を確認し、翌月の戦略を決めることである。
週次が日々の運転操作なら、月次はナビの再設定にあたる。 どちらか片方だけでは、ズレたまま走り続けることになる。
| やること | 中身 | 注意 |
|---|---|---|
| 月次レビュー | 月間のKPI達成状況をまとめ、何が効いて何が効かなかったかを整理する | 数字の羅列だけでは意味がない。「なぜそうなったか」の考察を必ずセットにする |
| 翌月の戦略を決める | 今の施策を続けるか、方向を変えるかを判断し、優先する施策を決定する | 「決めないまま動き続ける」が一番危険。月次はその判断を必ず行う場 |
| 関係を深める | 「最近、事業で気になっていることは?」を聞き、次のステップも確認する | 施策の話だけでなく事業全体に目を向けると「一緒に考えてくれる人」になれる |
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三つ目が単価と継続率に直結する。施策の話しかしない人は、代わりがいる。 事業の話ができる人には、代わりがいない。
月次レビューは「なぜ」を書く場所
数字を並べただけのレビューは、報告であってレビューではない。 「なぜそうなったか」を書いて初めて、翌月の判断材料になる。
書く順番は四つ。
- 今月のKPI — 目標と実績を並べる。達成/未達をはっきり書く
- 効いたこと — 何が数字を動かしたか。理由まで書く
- 効かなかったこと — 動かなかった施策と、その原因の仮説
- 翌月の方針 — 続けるもの、やめるもの、新しく試すもの
三つ目を書けるかどうかで、レビューの価値が変わる。 効かなかったことを書かないと、翌月も同じことを続けてしまう。
今月の成約は3件で、目標の5件には届きませんでした。
効いたのは投稿の型を変えたことです。保存率が2%台から3.5%まで上がり、 プロフィールへの到達が1.4倍になりました。ここは来月も続けます。
効かなかったのはストーリーからの誘導です。回数は増やしましたが、 DMの数がほとんど変わりませんでした。原因は、誘導の文言が 『詳しくはDMで』だけになっていて、DMを送る理由が示せていないことだと考えています。
来月は、投稿の型は維持したうえで、ストーリーの誘導文を 『何が受け取れるか』が分かる形に変えます。ここを二週間見て判断します。
⚠️ 月次レビューで避ける形
- 数字だけを並べる。読んだ側が「で、どうするの」となる
- 未達を曖昧にする。「もう少しでした」ではなく、3件と5件を並べる
- 原因を外に置く。「アルゴリズムが変わって」で止めると、次の手が出てこない
- 方針を決めずに終わる。決めないまま動き続けるのが、いちばん危険
数字はどこで取るか
毎週見る数字は、取る場所を決めておく。決めていないと、毎回探すことになって続かない。
| 数字 | どこで取るか | 頻度 |
|---|---|---|
| リーチ・保存・シェア | 各投稿のインサイト | 週一回まとめて |
| プロフィールへの到達数 | アカウントのインサイト | 週一回 |
| フォロワーの増減 | アカウントのインサイト | 週一回 |
| DMの数 | 手で数える。または管理表に記録 | 都度 |
| 面談の予約数・実施数 | 予約フォームの記録 | 都度 |
| 成約数と金額 | クライアントからの報告 | 月一回 |
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表を一つ作って、毎週同じ場所に書き込む。 数字が横に並ぶと変化が見える。 毎回バラバラの場所にメモしていると、比較ができず、結局使われない数字になる。
クライアントワークで意識する五原則
「言われたことをこなす人」から「一緒に考えてくれる人」へ。 そこが単価と継続率の差になる。
⚡ クライアントワークの五原則
- 共同経営者として考える — 依頼をこなすだけの人は代替可能。先に提案できる人は代替不可
- 期待値を先読みして管理する — 成果が出る前の連絡の密度が、信頼の土台になる
- 問題の上流を触る — 依頼された施策が本当に効くか疑う。ズレていれば正直に指摘する
- 決定事項と背景を記録する — 毎回ゼロから話さない状態を作る
- 撤退・修正の判断を早くする — うまくいかない施策を続けるのは、相手への損失
三番目が最も難しい
「言われたとおりにやる」ほうが、その場は楽である。 指摘して機嫌を損ねるリスクもない。だが、効かない施策を言われたとおりに続けた結果、 成果が出ずに契約が終わる。結局いちばん損をする。
指摘するときは、否定ではなく比較の形にする。 「それは効きません」ではなく「それも一つですが、いま数字を見ると〇〇のほうが詰まっています。先にそちらを直しませんか」。事実を並べて、判断を相手に渡す。
提供の質が、次の売上を作る
セールスは一回きりだが、提供は契約が続く限り何度も効く。
成果が出たクライアントは契約を続け、紹介もしてくれる。 第5部で見たとおり、紹介は最も成約率の高い経路である。その紹介が生まれるかどうかは、 セールスの上手さではなく提供の質で決まる。
- 📘 フルフィルメント:契約した内容を実際に届ける工程。提供・納品のこと。
提供設計の四本柱
| 柱 | 中身 | なぜ要るか |
|---|---|---|
| 期待値コントロール | 何を、いつまでに、どこまでやるかを先に揃える | ズレたまま進むと、成果が出ても不満が残る |
| 接触頻度 | 定期的に連絡を取る。週次報告がこれにあたる | 接触が途切れた期間が、そのまま不満の量になる |
| 成果の可視化 | 数字と変化を、見える形で渡す | 進んでいても、見えなければ進んでいないのと同じ |
| 関係構築 | 施策の外の話もする | 「業者」から「相棒」に変わる分かれ目 |
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なぜ期待値が最初に来るのか
四つのうち、期待値コントロールだけは最初にやらないと取り返しがつかない。
相手が「三ヶ月で月商100万」を期待していて、こちらは「三ヶ月で導線が完成」を想定していたとする。 三ヶ月後、導線は完成しているのに相手は不満になる。成果は出ているのに、失敗と受け取られる。
だから契約直後に、何がいつまでにどこまで進むのかを一枚にして渡す。 このとき、良い予測ではなく現実的な予測を出す。 期待を上げて取った契約は、その期待を超えられずに終わる。
⚠️ 雑な提供が起こすこと
- 解約される。当然だが、失うのは一件の売上だけではない
- 紹介が消える。最も安い獲得経路が閉じる
- 実績として使えない。次の営業で語れる事例が増えない
- 悪い評判が残る。狭い業界では、これが最も長く効く
請求書が信用を作る
請求書は事務作業ではなく、信用を可視化する書類である。 形式が整っているだけで「ちゃんとしている人」という印象が生まれる。
⚡ 請求書に入れる八項目
- 請求書番号(後から探せるように)
- 発行日と支払期限
- 請求先の正式名称
- 自分の氏名・屋号・連絡先
- 業務内容の内訳(何に対する報酬か)
- 金額(税の扱いを明記)
- 振込先
- 備考(対象期間、算定の根拠)
八番目が効く。レベニューシェアの場合、どの売上に対する何%なのかを毎回書いておく。 これがあると、後から見返したときに計算が追える。無いと、数ヶ月後に自分でも分からなくなる。
SOP|再現性の設計
- 📘 SOP:Standard Operating Procedure。標準作業手順書。誰がやっても同じ結果になるように、手順を文書にしたもの。
ここからは、自分がいなくても回る状態の作り方に入る。
伸びない理由は属人化
一人でやれる量には上限がある。クライアントを二件、三件と増やそうとすると、必ずここで止まる。
止まる理由は能力ではなく、手順が自分の頭の中にしかないことである。
| 属人化している状態 | SOPがある状態 | |
|---|---|---|
| 手順 | 自分の頭の中にある | 書いてある |
| 人に任せる | 毎回説明が必要 | 渡せば動く |
| 品質 | その日の調子で変わる | 一定になる |
| 休む | 全部止まる | 回り続ける |
| 件数 | 増やせない | 増やせる |
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投稿一本にも工程がある
「投稿を作る」は一つの作業に見えるが、分解すると七つある。
工程に分けると、三つのことが同時に起きる。
- どこで詰まっているかが分かる — 「投稿が遅い」ではなく「台本で止まっている」と特定できる
- 一部だけ人に任せられる — 全部を任せるのは難しいが、編集だけなら渡せる
- 品質が安定する — 各工程に判断基準を書けば、誰がやっても同じ形になる
SOPは効率化ではなく前提条件
SOPを「時間を短縮するもの」だと考えると、後回しになる。 実際には規模を増やすための前提条件である。
一件を回している間は、SOPが無くても困らない。 だから多くの人が作らないまま二件目に入り、そこで破綻する。 破綻してから作るのでは遅い。
⚠️ SOPを作るときの三つのミス
- 細かく書きすぎる — 読むのに時間がかかり、誰も見なくなる。判断が必要な場所だけ書く
- 一度作って更新しない — 実態と合わなくなった手順書は、無いより悪い。間違った動きを固定する
- 自分だけが分かる書き方をする — 「いい感じに」「適宜」は、他人には実行できない
判断基準は、数字と条件で書く
SOPが機能するかどうかは、判断が必要な場所をどう書いたかで決まる。
| 書き方 | 例 | 他人が実行できるか |
|---|---|---|
| 感覚で書く | 「反応が良ければ続ける」 | できない。良いの基準が人によって違う |
| 数字で書く | 「保存率が3%を超えたら同じ型で続ける」 | できる |
| 条件で書く | 「クレームが来たら、返信せずに自分に転送する」 | できる |
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実際に書いてみるとこうなる
投稿一本のSOPを、工程ごとに書くとこの形になる。 各工程に「完了の条件」を入れるのがポイントで、これがないと次に進む判断ができない。
工程1|企画。ワードバンクの『場面』カテゴリから一つ選び、それを軸にした投稿案を三本出す。完了条件は、三本の案が箇条書きで書き出されていること。
工程2|台本。三本のうち一本を選び、冒頭の一行と結びの一行を先に書く。 冒頭は、ワードバンクの実語をそのまま使う。完了条件は、冒頭・本文・結びが揃っていること。
工程3|撮影・作成。台本どおりに撮る。撮り直しは二回まで。 三回撮っても納得できない場合は、台本に問題があるので工程2に戻る。
工程4|編集。テンプレートを使う。文字の大きさと配置は変えない。 完了条件は、音声が聞き取れること、最初の三秒に文字が出ていること。
工程5|投稿。決めた曜日・時間に出す。キャプションの最後にCTAを一つ入れる。
工程6|初動確認。投稿から二時間後にインサイトを見る。 リーチが直近五本の平均を下回っていたら、記録に残す。この時点では何もしない。
工程7|分析。週の終わりに五本まとめて見る。保存率が3%を超えたものは 『効いた型』として記録し、次週の企画で優先する。
書いてみると、判断が必要なのは工程1・3・7の三箇所だけだと分かる。 残りの四工程は、手順どおりに動かせば誰でも同じ結果になる。 つまり、その四つは先に人に渡せるということでもある。
いなくても回る状態
最終形は、自分が一週間いなくても数字が落ちない状態である。
そこまで来ると、自分の時間は「作業」から「設計と判断」に移る。 複数のクライアントを同時に見られるようになり、単価ではなく件数で伸ばせるようになる。
これは第4部で見た「十四の職域」の話と繋がっている。 作業の職域を人に渡し、自分は設計の職域に移る。 その移動を可能にするのがSOPである。
この章のチェックリスト
⚡ 第7部の通過チェック
- 契約直後にやる三つを言える
- 完成度より速度が効く理由を説明できる
- 契約後の七ステップを順に言える
- メインKPIとサブKPIの違い、報告の使い分けを言える
- 四段階の転換率と基準値を言える
- 転換率の分母について、契約時に確認すべきことを言える
- PDCAで一つだけ変える理由、二週間観察する理由を説明できる
- ボトルネック診断表を使って、詰まりから打ち手を出せる
- 週次と月次の役割の違いを言える
- 報告することがない週でも報告する理由を説明できる
- 五原則を挙げられる
- 提供設計の四本柱と、期待値が最初に来る理由を言える
- 請求書の八項目を言える
- SOPが効率化ではなく前提条件である理由を説明できる
次章へ
ここまでで、自分の事業の話が一通り終わった。 自分の商品を決め、相手を見つけ、商談し、契約後を回すところまでが揃っている。
ここから先はクリエイターの事業の話に切り替わる。 契約後の七ステップのうち、1から5にあたる部分である。 誰に何を売るのか、どう集めるのか、どう売るのか。 自分が設計し、クリエイターが実行する領域に入っていく。